大きな病気に伴う薬物治療、手術などは心の大きな負担を抱えます。それでも周りからの気遣いの声や対応に、一生懸命応えることもあるのではないでしょうか。
ただ正直なところ、「人と関わるのがツラい・・・」「一人の時間がほしい」「そっとしておいてほしい」という気持ちになることもあります。
そんな気持ちになった自分に自己嫌悪になったり、奮起して明るく笑顔で過ごそう!と頑張る方もいますよね。
こんな風に周囲との人間関係に気疲れするのは、闘病中で身体がだるいからという以外に理由があります。その理由を知っていくと、自己嫌悪になったり無理に明るく笑顔で過ごす必要はなくなっていきますよ。

【話したくない原因は自律神経の仕業?】
話したくなくなるその原因を探るのに大切なのが自律神経です。自律神経の作用を知っているだけで今のご自身の心の状態に加えて、相手の心の状態も見えてきます。そうすることで、どう対応すると良いのかが見えてきますよ。
その自律神経には、大きく分けて「交感神経」と「副交感神経」の二つがあります。簡単に図解と共にお伝えしますね。
☆交感神経:アクティブに動くための神経

交感神経は、活動的に動くために必要な神経。
例えば、朝起きて行動を始めるときや、何かに集中しているときに働きます。しかし、ストレスや緊張を感じたときもこの神経が優位になり、心拍数が上がったり、イライラしたりすることがあるのです。
闘病中は通院、採血などの処置、抗がん剤や放射線治療、体の痛みなどで心拍数が上がりやすい状況なのです。
☆副交感神経:心と体を休めるための神経
副交感神経には「背側迷走神経」と「腹側迷走神経」の2種類があります。
・背側迷走神経

思考や体が固まり、無気力になるときに働く神経です。一方で、心と体を休めるために重要な役割を担っています。例えば、小さな子どもが背中をトントンされると安心して眠るのは、この神経が関与しているからです。
闘病や治療後にだるさや気持ちが参ってしまうという時は、この背側迷走神経が強く働いている状況です。
・腹側迷走神経

エネルギーがたまるとじわじわと働きはじめる神経です。安心したり、誰かと「つながりたい」と感じたりするときに活性化します。
闘病中や治療後、またはサポートをするご家族の方も含め、この緑の腹側迷走神経になる時間を持つことでホッと一息つくことができますよ。
このように、私たちの自律神経は無意識のうちに状況に応じて切り替わり、心と体を守る役割を果たしているのです。

どの神経も命を守るために必要なもの。どれがいい・悪いということはありません。
一見すると緑の腹側迷走神経がよさそうに見えてしまいますが、こればかりが高いとアクティブに好奇心旺盛にチャレンジにはつながらないのです。
赤の交感神経が高まるからこそ新しいことにチャレンジしたり、いざという時に危険を回避できます。また青の背側迷走神経が高まるからこそ心にエネルギーを貯めてご自分を守ることにつながっていくのです。
【なぜ闘病中・治療後などは、「人とつながりたくない」と感じるのか?】
大きな病気や手術を経験すると、体は常にストレス状態にありますよね。そのため赤の交感神経が過剰に働きがちになるのです。これにより、気づかないうちに心身ともに疲労が蓄積されていきます。
このとき、過剰に働きすぎた赤の交感神経でこれ以上ご自身の体と心が壊れてしまわないよう、青の背側迷走神経が優位になっていきます。体と心を守ろうと本能的に切り替わるのです。
その結果、
・部屋を暗くしたくなる
・ひとりで静かに過ごしたくなる
・声を出すのもしんどいと感じる
・食事やお風呂に入るのが面倒になる
・お化粧や着替えなどが億劫になる
・布団にくるまって静かに過ごしたい
といった状態になります。
これは青の背側迷走神経の働きより、「エネルギーをためる時間」です。
先ほどもお伝えしたように、エネルギーをためることで少しずつ少しずつ動こうかな?動けるかな?と体と心が回復してきます。引きこもるような状態はあまりいイメージはないかもしれませんが、実は体と心にとってはとても大切なことなのです。
【心と体を回復させるために大切なこと】
闘病中や治療後、そのサポートをするご家族の方も皆さん心と体を回復させるために大切なことがあります。
① 無理に頑張ろうとしない
「頑張らなきゃ」と思っても、赤の交感神経が過剰に働いていると心身は疲れてしまいます。それはガス欠になるのと同じなのです。
まずは自分の体と心のガス欠を回復するのが先決。青の背側迷走神経の働きを高めて、「休むことも大切」と意識しましょう。そうすることでエネルギーがたまってきますよ。
② 休息のための環境を整える
背側迷走神経が優位になっているときは・・・
・無理に人と話そうとする必要はない、SNSなどの交流も控えてOK
・静かな時間を持つ
・温かい飲み物を飲む
・ゆっくりお風呂に入る、リラックスした好きな衣類で過ごす
といった方法で心を落ち着かせましょう。
もしお子さんがいたり他のご家族が居てこのような環境作りが難しいときは、1日10分でもいいのです。ご自分のための時間を確保できるようにご家族や社会資源を活用してくださいね。
③ 安心感を得られる人とのつながりを大切に
青の背側迷走神経の働きによりエネルギーが回復してきたら、少しずつ「話してみようかな」「誰かと会いたいな」と思えるように、不思議と自然に思えるようになるものです。
そうなってからでOK!
・信頼できる家族や友人と話す
・気を使わずにいられる人と時間を過ごす
・好きなことですぐにできそうなことを少しやってみる
といったことを意識すると、緑の腹側迷走神経が伸びてきて心が満たされていきます。
ただし、無理に心を満たそうとする必要はありません。ご自身の心地よいな~と思う所までで休み休み進めていきましょうね。
【まとめ】
自律神経は、状況に応じて無意識のうちに切り替わり、心と体を守る仕組みを持っています。
闘病中、治療後など「人と話したくない」「何もしたくない」と感じるのは、青の背側迷走神経が働きエネルギーをためるための大切な時間です。無理に明るく頑張ろう!ポジティブでいよう!とする必要はありません。
そんな風に青の背側迷走神経が高まっている時は、
・今は休むときと受け入れる
・自分に合った休息方法を試す
・エネルギーが回復したら、人とのつながりを大切にする
この3つを意識しながら、自分のペースで体と心を回復させていきましょう。
「つながりたくない」と感じる自分を責める必要はありません。その気持ちは、あなたの体と心が「今は休みが必要」と教えてくれているサインなのです。
どうかご自身の体と心からのサインを無視せずに大切に受け取ってあげてくださいね。それこそがあなた自身があなたを大切にするという一歩につながり、気疲れせずに今後も過ごしていける。その秘訣になります。
心の専門家に話を聴いてほしいな・・という時は、赤・青・緑のどの神経が高い状態でも問題はありません。安心してお話にいらしてくださいね。今日からあなたの体と心が心地よく過ごしていけますように。